｢誰も四季くんのことを悪く言うひとはいないわよ。社員、パート、派遣含めてね。武田課長も職場復帰し以前のようにバリバリ働いているわ。初瀬川さんも、長谷川じゃなく、本名の初瀬川として働いているわ。四季くん、戻ってきて。また一緒に働こう」 黒田さんの気持ちは痛いくらい分かる。分かるけど……。そっと彼を見上げた。 ｢決めるのは四季だ」 彼がにっこりと微笑んでくれた。 「黒田さん、このメモを預かっても大丈夫ですか？」 「えぇ、勿論。朝宮さん、折り入って頼みがあるんだけど」 言いにくそうに黒田さんが口を開いた。 「まこ こころの会の代表は私ではく、まこさんの息子である副島が適任です」 「それを決めるのは遺族の皆さんよ。私ではないわ。朝宮さん、息子が四季くんに会いたがっているのよ。一度でいいから……勿論、朝宮さんもご一緒に。会ってもらえないかしら？」 ｢失礼ですが息子さん、いま幾つですか？」 ｢２５歳よ」 ｢２５、そうですか」 年を聞くなり彼の眉間にどんどん皺が寄っていった。 ｢新婚さんには野暮な質問だったわね。そのうち、会ってもらえればいいわ」 黒田さんが困ったように苦笑いを浮かべていた。