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新たな事件のはじまり

「あ、そうだ和真」 彼と一緒に浴室に向かおうとしたらコオお兄ちゃんに呼び止められた。 「頼まれていた電話番号だけど」 「え?もう分かったのか?さっきメモを見せたばかりだろう」 「暴力団絡みは一宮さんに聞くのが手っ取り早いからすぐに調べてもらったんだ。一番上のは隣県で勢力を持つ指定暴力団、宇賀神組の構成員の携帯電話だった。彼はしらさぎ丘児童養護施設の出身だ。真ん中のは県北地区にある産科婦人科の電話番号だった。一番下のは調査中だ。もう少し待ってくれ」 「それだけ分かれば十分だ。ありがとう」 「和真さん、きよちゃんはもしかして、そのうがかみみに」 呼び方が難しくて噛んでしまった。 「うが、かみ、ぐみ。だ。焦る必要はない。発音はゆっくりでいいよ」 「そこで匿ってもらってるのかな?」 「その可能性は十分にあると思う」 「そのままそこで大人しくしてくれればいいんだが。風呂に入るんだったな。声を掛けて悪かった」 「いや、大丈夫だ」 コオお兄ちゃんのスマホがぶるぶると鳴り出した。 「出なくていいのか?」 「どうせ昴からだ。会社でも休憩時間になると飲み物持参で必ず秘書室に来るんだよ。さっきも話しをしたんだが」 「デートに連れていったらどうだ?」 「だから昴とはまだ付き合うとは決めていない」 「征之さんも息子の相手が昴くんなら……小さいときから知ってるし、別に反対しない。そう言ってる」 「また余計なことを」 はぁ、ひとつため息をつくとリビングに戻っていった。

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