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新たな事件のはじまり

浴用の椅子に座らせてもらい、髪を洗ってもらったあと、ボディソープをたっぷりと使って体の隅から隅まで洗ってもらい、温かいシャワーの湯で体の泡を洗い流してもらった。 「薄情な兄だとみんな思っているだろうな。妹に会ったことがないから、なんの感情も沸いてこないんだ」 「和真さんは薄情なんかじゃないよ。僕や結お姉さんだけじゃない。櫂さんとお爺ちゃんとお婆ちゃんや、征之おじちゃんとコオお兄ちゃんや、昴さん、みんなのこといつも気遣ってくれるもの。ねぇ、和真さん。和真さんのお兄さんは妹さんに会ったことは?」 「断言は出来ないけど、あると思うよ」 「結お姉さんの代わりに連れ去られたってことは?」 「十分あり得るかもな。お風呂に入ろう」 彼が抱っこしてくれて、湯船にゆっくりと体を沈めた。 「最初は足を滑らせて四季を落とさないかひやひやしていたんだ。自分でもいうのも変だけど危なっかしくて見ていられなかったんだ。最近は四季の裸をじっくり見る余裕が出てきた」 「和真さんのエッチ」 何を言い出すかと思ったら。恥ずかしくてまともに彼を見ることが出来なくて。下を向いた。 「相変わらず恥ずかしがりなんだね」 肩に逞しい腕が回ってきてぎゅっと抱き締められた。 「四季」掠れた声が耳に注ぎこまれ、どきっとして顔を上げると、濡れた額に搔き上げられた前髪が一筋、落ちて張り付いていた。得もいわれぬ色香が彼から滲み出ていて、心臓が今にも飛び出してくるんじゃないかというくらいドキドキした。

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