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新たな事件のはじまり
「和真さん、お兄さんの娘さんこれからどうなるの?ご両親もいない、和真さんのお父さんは娘さんが行方不明で、面倒をみれる状況じゃない。僕と同じように施設に引き取られることになるよね」
彼の袖をぎゃっと掴んだ。
「きみが何を言いたいか分かるよ。子どもには罪はない、だよね」
「和真さんや結お姉さんに酷いことをしたのは許されることじゃない。僕だって許そうとは思わない。でもね、たったひとりぼっち、誰も知らない大人ばかりがいる警察署でママが恋しくて、寂しくて、心細くて、今ごろ泣いていると思う。ママのことが心配だけど誰にも聞けず、不安でいっぱいだと思う。だから、一晩だけ彼女の側に寄り添ってあげたい。ひとりじゃないって分かれば、明日には元気になってママを待つことが出来ると思うんだ」
彼に余計なことに首を突っ込むな。もう赤の他人だ。関わるな。そう言われると覚悟した。でも、彼から返ってきた言葉は意外なものだった。
「四季の気持ち、十分分かったよ。一晩だけ面倒をみよう」
「本当に……いいの?」
それでも不安で。おそるおそる聞き返した。
「本当に?」
「あぁ」
優しい笑顔と共に頷いてくれた。
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