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こはるちゃん
「あたし、こはるちゃん。にしゃい」
人見知りもせず、こにこと愛くるしい笑顔を振りまいていたこはるちゃんこと、由利心春 ちゃん。
名字が由利なのは、こはるちゃんのお母さんと彼のお兄さんは正式に結婚していないからだった。
「心春は俺たちのことを覚えていた。母親がアイス屋さんで会ったふたりが、おじさんとおばさんだと教えていたみたいだ」
不安な気持ちを隠すため、わざと明るく振る舞っていたこはるちゃん。迎えに来た彼の姿を一目見るなり、安心したのかわんわんと泣き出した。手続きに思ったよりも時間が掛かってしまい、その間、眠そうに目を擦っていたこはるちゃんは車に乗るなりすぐに寝てしまったみたいだった。
起こさないように彼がこはるちゃんを抱っこして連れてきてくれた。
「朝起きたらびっくりするよね」
「そうだな」
こはるちゃんを真ん中に寝せて、三人仲良く川の字で眠ることにした。
可愛らしい寝顔に顔が自然に緩みっぱしになった。
全く知らない家に連れて来られ、緊張しない訳がない。なるべくこはるちゃんを驚かせないようにしよう。眠くなるまで彼とこれからどうするか何度も話し合った。
こはるちゃんのお母さんの両親は始発の新幹線で福島に来ることになっているみたいだった。
こはるちゃんのお母さんは、お腹の赤ちゃんを守るため生死の境で必死に戦っている。懸命に生きようとしている。
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