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こはるちゃん

足音が聞こえたような気がして。ドアノブに手を置こうとしたら、すっと静かにドアが開いた。 「こはるちゃん起きたの?」 怖がらせないように声を掛けると、パタンとドアが閉まって。ぱたぱたとどこかに走っていってしまった。 「お外に出たら危ないよ」 追い掛けようとしたら、俺がいく、征之おじちゃんがあとを追い掛けてくれた。 「こはるちゃん、どこに隠れたのかな?ここにはいないな」 いつの間にかかくれんぼうがはじまった。 「父さん、子どもが好きなんだ。ボランティアで近くの小学校の児童の登下校の見守りをしている。昴のことを話したら、孫を抱く夢は叶わないか、寂しそうにしていた」 コオお兄ちゃんが申し訳なさそうに頭を項垂れた。 「性的嗜好を隠し結婚したとしても、妻となってくれた女性を傷付けるだけだ」 彼がコオお兄ちゃんをフォローするつもりで発した一言に、斎藤さんがどきっとし、飲んでいたコーヒーを吹き出した。 「大丈夫か?」 「変なところに入ったみたいだ」 ごほっ、ごほっ、と噎せる斎藤さんの背中を彼とコオお兄ちゃんが擦った。 「四季、タオル」 「はい」 ハンドリムをこいで洗面所に急いでむかった。

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