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罪を憎み、人を憎まず

ー和真、正気なの?ー 「罪を憎み決して人を憎まず。お爺ちゃんがよく言っていただろう」 ーそれはそうだけど……ー 「心春の母親を刺したのは女性だ。だから中村さんが怖かった。知らないところに連れていかれるのはもっと怖かったんだと思う。明日、お爺ちゃんの家に四季と心春と一緒に戻ることにした。姉さん、そっちの暮らしはどう?慣れた?」 ーう~~ん、それがねー そこで言葉を止めると、ため息が聞こえてきた。 ー見渡す限りイケメンばかりなのよ。お爺ちゃんがね今どきヤクザは流行らないって言ってたから、若い人はほとんどいないだろうって予想していたんだけど、蓋を開けたらもうびっくり。いたせり尽くせりで、まるで女王様になったような気分よー 「イケメンに傅かれ、櫂さんに焼きもちを妬かれて大変なんだろう」 ーそうなのよ。だから、困ってるのー 「菱沼組の組長は30代半ば。今どき珍しく義理人情に溢れ、面倒みもいい。だから、自然と若者が集まってくるって聞いた。ランコントルの手伝いをしている組員もみんなイケメン揃いで、若い女性客が増えてかなり繁盛しているみたいだし、まぁ、相乗効果ってことでいいんじゃないかな。心春はあの人の娘。その事実は消えない。その事は俺も四季も十分分かってるつもりだ。姉さんもくれぐれも気をつけて」 そう伝えると電話を静かに切った。

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