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彼は犯人じゃないのに

「どうしても俺に罪を擦り付けたいひとがいるみたいだ。警察はいつからずる賢い悪者の味方をするようになったんだろうね。弱いものの味方をしてくれる警察官は一人もいないのかな」 寂しそうに呟くと、意を決し玄関に向かった。 「こはるちゃん、おじちゃんと四季くんの側から離れないように。いいね」 「はぁ~い」 可愛らしいちっちゃな右手が上がった。 「征之おじちゃん、こはるちゃんを膝の上に乗せてもらっていいですか?警察署で会ったことがあるかも知れないけど、知らない大人のひとが大勢押し掛けてくるんです。中には女性の警察官もいるかも知れない。こはるちゃんにこれ以上怖い思いをさせたくないんです。お願いします」 頭を下げた。 「足に負担がかからない?」 「大丈夫です。施設でも噛むか泣くことでしか表現することが出来なかった1歳児ふたりをいっぺんに抱っこしてあやしたことがあるので」 「そこまで四季くんが言うなら」 征之おじちゃんがこはるちゃんを抱き上げると、コアラの親子みたいに、向かい合わせに膝の上に座らせてくれた。 「胸にぺたんって頬っぺをくっつけて、ちゃんとしがみついてて。何があっても落とさないから、大丈夫だよ」 こはるちゃんの背中と腰を両手でしっかり抱き締めた。

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