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家族という名の他人

雲ひとつない空の下、庭には刀の形をしたグラジオラスの葉がすがすがしく生え、鈴蘭の葉が青々と茂っていた。 お爺ちゃんとお婆ちゃんが仲良く庭の草むしりをしていた。 彼と相談し、こはるちゃんと一緒にふたりのもとに戻ることにした。 「じぃじ、ばぁば、ちゃちゃ」 「こはるちゃんありがとう。一服するか」 お爺ちゃんが首に巻いていたタオルで額の汗を拭った。 「そうですね」 仲良く庭の草むしりをしていたふたり。手を止めると、縁側に座り、こはるちゃんが両脇に抱えよいしょよいしょと頑張って持ってきた500リットルのペットボトルのお茶を嬉しそうにそれぞれ受け取った。 「暇な連中だ。他にもやることが山のようにあるだろうに」 何かに気付いたお爺ちゃん。怪訝そうに眉を寄せ、道路の方に目を向けた。 あれから市内では夜ひとりで帰宅する女性を狙った通り魔事件が3件立て続けに起きていた。犯人に彼が酷似している。警察に匿名の情報提供があったみたいで、警察は彼を重要参考人と一方的に決め付け徹底的にマークしているみたいだった。 お爺ちゃんには腹が立ってならないが、文句を言っても仕方がない。今は我慢のときだ。辛抱してくれ。そう言われた。彼と一緒ならこの窮地もきっと乗り越えられる。くよくよしても仕方がない。何事も前向きに考えて、彼の前ではなるべく明るく振る舞おうと決めた。

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