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家族という名の赤の他人

「ただいま」彼が城さんを伴い帰ってきた。 「一宮、悪いな、野良仕事中なのに」 「ちょうど一服していたんだ。城も一緒にどうだ?」 「じゃあ、遠慮なく」 城さんがお爺ちゃんの隣に腰を下ろした。 「こはるちゃん、おやつでも食べようか?」 城さんが実はお巡りさんだということを、こはるちゃんには伏せている。怖い思いをしたばかりだもの。 「はぁ~~い」 可愛らしい小さな手をあげると、 「俺もはぁ~い」 彼も負けじと手をあげた。 「例の連続通り魔事件の容疑者の顔がなんで朝宮さんに酷似しているのか、よくよく考えてみたんだ。兄弟なら似ていて当然だ。貴大は収監中だ。ふたりの弟のどっちかが通り魔事件を起こしているとしたら辻褄が合う。朝宮さんに聞いたが数えるくらいしか会ったことがないって言われて、一宮なら詳しいかなって思ったんだ」 「道端で会っても挨拶せず、露骨に嫌な顔をして完全無視だ。和真の家族とはいえ、所詮赤の他人だ」 「そうか、なるほどな」 「隣県に宇賀神組という指定暴力団がある。ある舎弟が橋本と顔馴染みらしい。宇賀神組に匿われている可能性が高い」 「ヤクザ絡みか、面倒なことにならないといいが」 「そうだな」 城さんが空を見上げ、大きくため息をついた。

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