485 / 588
家族という名の赤の他人
「こはるちゃんはひとりじゃない。だから安心して」
ほっぺとほっぺをぺったんして、背中を撫でてあやすと、安心したのかすやすやと眠りはじめた。
「心春汗びっしょりだ。四季も暑いだろう。寝かせてくるから」
「和真さん、ちょっとだけ待って」
額の汗を手で拭い、皮膚に張り付いた前髪をそっと左右に分けた。
「おやすみなさい。また明日遊ぼうね」
彼がこはるちゃんの脇の下に手を差し入れ、体の向きを変え抱き上げようとしたら、
「こはるちゃん。しーちゃんがいいの」
服にぎゅっとしがみついて、ぶんぶんと首を横に振った。
「しーちゃんは明日の準備がある。先に寝て待ってよう」
「しーちゃん」
目をうるうると潤ませ、じーっと見つめられた。
「それじゃあ、約束げんまんしよう?」
「うん」
小指を立てると、鼻を啜りながらこはるちゃんも小指を立ててくれた。
「約束げんまん嘘ついたら針千本の~ます。指切った」
「こはるちゃんできたよ」
「うん、よく出来たね」
頭を撫でるとようやく笑顔を見せてくれて。そのままストンと眠りに落ちていった。
ともだちにシェアしよう!