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つかの間の穏やかな日々
病院に行く前に直売所に用があるお婆ちゃんに付き添い直売所に立ち寄った。こはるちゃんはお爺ちゃんと車のなかでお留守番だ。
「あら~四季くんじゃないの」
「矢野倉さん、すっかりご無沙汰してしまい、すみません」
矢野倉さんと話しをしていたら、熊倉さんが「おはようございます」と大きな声で挨拶して素通りしていった。
「熊倉さん」
ハンドリムをこいであとを追った。
「元気そうで良かった。ホウレン草とかぶと新玉ねぎ。あとは大丈夫?」
「はい。ありがとうございます」
膝の上に買い物かごを乗せてもらい野菜を入れてもらった。
お婆ちゃんはというと、野菜を出品している農家のおばちゃんたちと賑やかに談笑していた。
「ねぇ四季くん。ご主人、オークポリマーに勤務しているのよね?」
「今は勤務していません。色々あって退職しました」
「あらそうだったの。悪いことを聞いてごめんなさいね。いやね、妹の息子が就活中で、オークポリマーがどんな会社かちょっと気になったの。すみません、今行きます」
パートの吉井さんに呼ばれ、熊倉さんが急いでレジに戻っていった。
病院が近付くにつれこはるちゃんの顔から笑顔が消えた。孫が昔使っていたけど、もう使わないからとご近所さんから譲ってもらったチャイルドシートに座り足をぶらぶらとさせながら、今にも泣きだしそうな悲しげな目で窓の外を見つめていた。
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