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暗澹
「四季くん、そろそろ帰ろうか」
お爺ちゃんが迎えに来てくれた。
「なんでおめさんがここにいるんだ」
男性を一目見るなり怪訝そうに眉を寄せた。
「困っていたので声を掛けただけですが、なにか問題でも?」
男性もお爺ちゃんに冷たい視線を向けた。
「そうかきみが……なるほどね」
ひとりで納得すると意味ありげな含み笑いをした。
「あっ、いた。急にいなくなるんだもの。探したんだよ」
黒々としたストレートヘアを背に流した女性が手を振りながら姿を現した。
長身で手足が長く顔が小さい。モデルなみに綺麗な女のひとだった。
「誰?」
不愉快そうに口を歪めた。
「知らない人」
「ふ~~ん。私には口説いていたように見えたけど」
「アイツと一緒にするな。帰るぞ」
「え?ちょっと待って」
先に歩き出した男性のあとを女性が慌てて追い掛けた。
「お爺ちゃん、もしかして彼……」
「四季くんも気付いたか。そうだ、和真の弟の唯人 だ。妹が行方不明なのに呑気なもんだな。四季くん、彼には要注意だ。近付かない方がいい」
「はい」
隣県の大学に通学しているもうひとりの弟の名前は朔也 という名前だと教えてもらった。
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