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カインコンプレックス
「こはるちゃん大丈夫?」
「うん。しーちゃんいるから」
「良かった……」
こはるちゃんの笑顔を見たとき、悪夢から覚めたようなホッとした気持ちにようやくなれた。
「あんた、見た目とは違い、なかなか度胸があるな」
お店のひとが感心していたけど、手にびっしょり汗をかいていた。足が痺れているのか、震えているか自分でもよく分からなかった。
「兄貴!」
「兄貴!」
どこからともなく強面の男のひとたちが一人また一人と姿を現した。
こはるちゃんは怖がって背中のほうに隠れてしまった。
「子どもが怖がるから隠れていろって。絶対に出てくんなって言っただろうが。たく、しょうがねぇな」
お店のひとが頭を掻きながら、
「俺の名前はヤスだ。菱沼組で若頭の補佐みてな仕事をしている。他所の組の者がうろついてるって聞いて、警戒を強めていたところだったんだ。ゆきうさぎ丸の店長が入院中で、代わりに俺が店長をすることになったんだ。買い物に行きたくても行けない年寄りが大勢いる。ゆきうさぎ丸が休んだらその人たちが困るからな。何はともあれふたりとも無事で良かった」
ほっと安堵のため息をついた。
顔はめちゃめちゃ、すごく怖いけど、もしかしたら僕たちの味方なのかも知れない。
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