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カインコンプレックス
菱沼組といったら結お姉さんが身を寄せている……。
こはるちゃんの体を片手で抱き締め、ヤスと名乗った男を恐る恐る見上げたら、
「だから、そんなに怖がらなくてもいい。とって食ったりしねぇよ。さっきの連中が戻ってくるかも知れないから家まで送る」
にっこりと笑うと、僕の頭と、こはるちゃんの頭をぽんぽんと優しく撫でてくれた。
「それ持ってやるから寄越せ。誰か車椅子押してやれ」
買い物かごをヤスさんに渡すとこはるちゃんが膝の上によじ登ってきて、ぎゅっとしがみついてきた。
片手でこはるちゃんの体を支え、もう片方の手でハンドリムをこごうとしたら、若い男性が駆け寄ってきて、お嬢ちゃんしっかりママに掴まってろ、そういいながら車椅子をゆっくりと押してくれた。
「ありがとうございます」
本当はママじゃないんだけどな。
内心そう思いながら、ママと間違われたことは嫌じゃなかった。むしろ嬉しかった。
「しーちゃん、ママ」
こはるちゃんも嬉しいみたいで、にこにこの笑顔を浮かべていた。
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