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カインコンプレックス
たもくんが帰り、こはるちゃんはお婆ちゃんにお風呂に入れてもらっている。
ようやく訪れた夫婦ふたりだけの時間。
「ごめんなさい……」
あれほど気を付けろと言われたのに。てっきり怒られると思ったけど、
「なんで謝るんだ?四季は悪くない。お隣さんの家にも気軽に行けないとはな……怖かっただろう」
「うん」
頷くと、彼はどこかへ電話を掛けた。
「俺だ。すぐに調べて欲しいことがあるーーそうだ、大至急だ」
僕とこはるちゃんを襲おうとした男たちの特徴や車の特徴をてきぱきと伝えた。
助けてくれた菱沼組のヤスさんの顔を見て逃げ出したことも。
電話を終え、長く息をつくと、ぎゅっと抱き締められた。
「ごめんな。危ない目に遭わせて。男たちが言っていた『あの人』はもしかしたら唯人かもしれない」
彼の声は、微かに震えていた。
その声音に、腕の強さに僕は声も出せなくなった。
「和真さん、唯人さんとの間に一体何があったの?」
聞くのも怖かったけど彼が苦しんでいる姿を見たくなかった。彼にはいつも笑っていてほしいもの。
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