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彼のお父さん
彼や結お姉さんを馬鹿にされ頭に来たけど、お客さんの前で怒るわけにもいかず、握り拳を震わせながらぐっと堪えた。
「誰の娘だっけ?マッチグアプリで知り合った男を騙して大金を巻き上げているのは……名前は確か……あ、そうだ。思い出した。朝宮和彦の娘だ」
ヤスさんが他のお客さんに聞こえるようにわざと大声を上げた。
「青二才のチンピラ共とつるんでなにやっているんだか。美人局も立派な犯罪だぞ。違うか?他人のことをバカにする前に、自分の娘をお巡りさんに連れて行くのが親なんじゃねぇか」
的を得たヤスさんの言葉に彼のお父さんは終始苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
「あなたみたいな古い考えしか出来ない人間がいるから、いつまでたっても同性婚が法的に認められないんじゃないんですか。それに自分のことを差し置いて、朝宮和真さんの妻にとやかく言う権利はあなたにはないはずです。違いますか?こんなところで油を売っている暇があるなら、彼の言う通り、お嬢さんを説得し警察に連れていったらどうですか?」
ヤスさんの隣に座っていた常連の男性客がすっと立ち上がった。
「は?貴様、何者だ」
「私ですか?この顔に見覚えはありませんか?」
自分より背の高い朝宮さんを睨むようにに見上げた。
「もしかして副島の父親か?」
それを聞いた常連のお客さん。はぁ~と深いため息をついた。
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