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彼のお父さん
彼のお父さんが、近くにあった椅子を足で蹴飛ばし、
「どいつもこいつも忌々しい連中ばっかだ」
唾をぺっと吐き、捨て台詞とともに帰っていった。
「うちの若い衆、みんな血の気が多いからな。無事に帰れればいいがな。四季、俺がやる。ほら、なにか話したがってるから聞いてやれ」
モップを取りにいこうとしたらヤスさんに止められた。
「初めまして、熊倉です。妻がご迷惑をお掛けし本当に申し訳ありません」
深々と頭を下げられ面食らってしまった。
「迷惑だなんて。そんなことないです。お願いですから頭を上げてください」
「なぜ妹が自ら命を絶ったのか、遺書もなく、妻は自分を責めました。なんでもっと話しを聞いてやらなかったんだろう。なんでもっと早く異変に気付いてやることが出来なかったんだろうと。半年前です。妹の同僚だった方が会社を退職し、その足で家を訪ねて来てくれたんです。その人は遺書らしきメモをスマホで撮影していました。なにがあったか、全部話してくれました。他言無用。上司から固く口止めされていたそうです。妻は妹を死に追いやった朝宮と会社ぐるみで妹の死の真相を隠蔽したオークポリマーに必ずどんな手を使っても復讐すると心に誓い、私たち家族に迷惑を掛けるからと、離婚届を置いて家を出ていきました」
「藁をも掴む思いで、協力してくれる仲間をマッチングアプリで探したんだろうね」
櫂さんが飲み物とミルクレープと季節のフルーツが盛られた皿を熊倉さんと僕の前にそっと置いた。
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