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キヨちゃん一途の彼
「妻と妹は喧嘩はするけど仲のいい姉妹だった。受付から社長秘書に大抜擢された。そりゃあ、喜んでいた」
当時のことを懐かしみながら話してくれた。
「まるで結婚詐欺師みていでだな。職権乱用もいいところだ。うちのオヤジは愛妻家で恐妻家だ。爪の垢を煎じて飲ませてやろうか」
ヤスさんが長い脚を組んでどかっと隣に腰を下ろしてきた。
ランチタイムが終わりヤスさんに車椅子を押してもらい家路についた。
お店の前の駐車場で待ってるはずの車が手違いから事務所に戻ってしまったみたいで、外の景色と町並みをのんびりと眺めながら、近くにあるスーパーにとりあえず向かった。
「暑くねぇか?」
「はい、大丈夫です」
「今の若いのは気の短い連中ばっかで、待つってことを知らない。困ったもんだ」
ヤスさんが辺りをキョロキョロと見回した。
「四季の旦那もオヤジと同じでスッゲー焼きもち妬きだろ?見られたら半殺しにされるんじゃねぇか、生きた心地がしない」
「和真さんはそんなことしません」
「そうか?人は見かけによらぬものってよく言うだろう?うちのオヤジも姐さんのことになると人が変わるぞ」
ヤスさんとそんなことを話しているうちあっという間にスーパーの駐車場に着いた。
入口に向かおうとしたら、黒塗りのセダンが目の前で急停車して、気付いた時には黒ずくめの服を身に付けた男たちに取り囲まれていた。
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