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新しい出会い
翌日。
カフェに向かっていたら、ちゃりんちゃりん。ものすごい速さで走ってきた自転車にベルを思いっきり鳴らされた。
「ごめんなさい」あわや接触するところだった。でもヤスさんが咄嗟に車椅子のブレーキ棒を引っ張ってくれたから事なきを得た。
でもグレーチング(側溝を埋める金網のこと)にタイヤがはまってしまい身動きが取れなくなってしまった。
「斜めに通過しなきゃいけなかったのに。ヤスさんごめんなさい」
「気にすんな」
押したり引いたり何度か脱出を試みるもなかなかうまくいかい。そんなときだった。
「ヤス、なにやってんだ」
ドスのきいた低い声が頭上から聞こえてきて。誰だろうと見上げたら、ふわりと身体が宙に浮いたからびっくりした。
「あ、あの……」
「怪我はなかったか?」
「はい、大丈夫です」
「なら良かった」
強面だけど、目はすごく優しそうな男性と一瞬だけ目が合った。彼より年上の大人の男性だった。
他者を寄せ付けない圧倒的な存在感を示す男性。そのまわりにいた黒服の男たちとヤスさんが車椅子を持ち上げ、邪魔にならない歩道の端へと移動させてくれた。
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