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決着のとき

「ウシロ、マエ。ミナイ」男性は無表情のまま車椅子を押してくれて。そのまま何事もなかったように店内に入った。キヨちゃんは黒服の男たちに行く手を阻まれて手も足も出させない。そんな状態だった。 「四季くん良かった無事で」 安堵のため息をつきながら出迎えてくれたのは櫂さんと、たまたまランチを食べに来てきた黒田さんだった。 「生まれたばかりの赤ん坊が母親の帰りを待ってるんだ。橋本さんにこれ以上罪を重ねさせる訳にはいかないと、卯月さんが色々と考えてくれたみたいだよ」 チラッと窓の外を心配そうに見つめる櫂さん。その視線の先にいたのは、やはり熊倉さんだった。手に握り締められていたのは殺傷能力が高いサバイバルナイフだった。刺したときに手が滑らないようにガムテープでグルグル巻きにしていた。 「熊倉さんだけはそんなことしない、なにかの間違いだって、ずっと信じていたのに……」 覚悟はしていたつもりだけど、あまりのショックに胸が締め付けられそうになった。 「四季くんが朝宮の息子の嫁だからだよ。橋本さんにそそのかされ、自分より立場の弱い四季くんを狙ったんだよ」 櫂さんがいつになく険しい表情を浮かべた。 「それってただの逆恨みじゃない。四季くんは朝宮さんの息子の嫁じゃない。一宮さんの孫の嫁よ。全然関係ないでしょう」 黒田さんもやりきれない思いで外を見つめた。

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