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決着のとき
キヨちゃんは血まみれの足をバタつかせ真山さんの肩に担がれていた。
少し離れた場所で熊倉さんは黒服の男たちに取り押さえられていた。
何が起きたのか全く分からなかった。
「橋本さんが発砲した直後、熊倉さんが橋本さんめがけて突進していったんだ」
「嘘……」
櫂さんの言葉がにわかには信じられなくて。言葉を失った。
「熊倉さんは四季くんを守ろうとしていた。橋本さん止めて!四季くんを撃たないで!そんなふうに叫んでいたと思うよ」
「熊倉さんが、僕を?」
全然聞こえなかった。
「まぁ、これだけ騒然としていれば聞こえなくても仕方がないよ。卯月さんが熊倉さんを寸でのところで止めた」
「じゃあ、誰がキヨちゃんを?」
「橋本さんは続けて2発目を撃とうとしていた。もし銃が暴発したら橋本さんの命が危ない。だから、真山は橋本さんを止めるためやむを得ず足を狙って撃ったんだ」
外に目をやると、卯月さんと真山さんが真剣な眼差しでなにかを話していた。
落とし前とか、よその縄張りでとか、素人には難しくてよく分からないけどそんな感じの会話を交わしていた。
「卯月さんは情け深いひとだ。今回は大目に見て、見逃してくれると思うよ。四季くんに二度と近付かないよう誓約書を書かせるかも知れないけどね。黒田さんもそこから動かない方がいいと思いますよ」
外に行こうとした黒田さんを櫂さんがやんわりと止めた。
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