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結婚式
それから、3ヶ月後ーー。
頭上には秋晴れの空が広がっていた。
10月10日。
今日は僕と彼の結婚式だ。
結お姉さんは8月に無事に女の子を出産し、紬 ちゃんと命名された。
披露宴を行う駅前のホテルで真っ白いタキシードに着替えた。
アンティークの机の上、ハットトルソーにかけられた格好で静かにそこにあるヴェールにそっと指を伸ばした。
触れた結婚式用のヴェールはさらりと手触りがよく、花柄のレースがとても可愛らしかった。
このヴェールは義之さんがまなみ先生と結婚式を挙げるために用意したものだ。
「きみにつけて欲しい。まなみもそう思っているはずだ」
事故後ずっと眠り続けていた義之さんが奇跡的に目覚めたのは先月末のことだ。
真っ先にまなみ先生のことを隆之さんに聞き、亡くなったことを知るやいなや号泣していた。
2日後、義之さんは探さないでくれと置き手紙を病室のベットの上に残し失踪した。
まなみをひとりにしておけない。
あの世でなら夫婦になれるかな。そんなことを隆之さんに漏らしていた。
まなみ先生が身に付けるはずだったヴェール。
まなみ先生の分も幸せにならなきゃ。バチがあたる。
「すごく可愛い。似合ってるよ」
「そうかな」
「うん」
結お姉さんに付き添ってもらい式を挙げる市民庭園へ車で向かった。
こはるちゃんと円花ちゃんはお爺ちゃんとお婆ちゃんが、紬ちゃんは櫂さんがそれぞれみてくれているから心配はない。
市民庭園が近付くにつれ緊張からか汗が出てきた。
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