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結婚式

花びらを敷き詰めて作ったヴァージンロード。征之おじちゃんに車椅子を押してもらい一緒にゆっくりと進んだ。 半分までくるとコオお兄ちゃんがすっと前に出て、車椅子からそっと抱き上げられた。 「コオお兄ちゃん、あ、あの……」 「落とさないから安心しろ」 至近距離で見つめられ優しく微笑まれた。 「昴さんに焼きもちを妬かれるから、その……」 「妹に焼きもちを妬いたら別れるって昴に言ってある。心配ない」 「じゃあ、和真さんは」 「和真は俺と四季がどんなに仲良くしててもじゃれあっていても焼きもちを妬かないよ。もうじき三児の父親になるんだ。少しは大人になってもらわないとな。和真の驚く顔を見るのが楽しみだな」 「うん」 こくりと頷き、お腹にそっと手をあてた。 なんのへんてつもない真っ平らなお腹なのに。新しい命が宿っているなんていまだ信じられない。 「ふたりで力を合わせればならなんとかなる。血の繋がりなんてそんなの関係ない。心春も円花も俺と四季の子だ。俺たちで立派に育ててみる。あのときの和真、格好良かったな。嘘偽りない真摯なことばに家庭裁判所の裁判官も心を動かれたと思うんだ」 「うん、僕もそう思う」 招待客と公園を散歩中の見物客が見守るなか、コオお兄ちゃんが一歩一歩、花びらの上を歩いていく。 白いタキシードを着た王子さまが、祭壇の前で僕を待っている。

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