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あなたたちだけが幸せになるなんて絶対に許せない

「今日は私たち家族にとって大切な日です。朝宮さん、どうぞお引き取り下さい」 彼が女性に頭を下げた。 「あなたたちだけが幸せになるなんて絶対に許せない!その女が来たからみんな不幸になったんだ!この疫病神!私の子どもたちを返して!」 女性の怒りの矛先は彼じゃなく僕へと向けられた。 「家庭が崩壊したのは俺のせいでも、四季のせいでもない。罪を犯せば当然償わなければならない。それはあなたが一番よくご存知のはずです」 被害に遭った男性たちに和解金を支払い示談にしたみたい。でも提示された和解金に納得が出来ないと提訴に踏み切った被害者もいるらしく、熊倉さんの妹家族からも自殺に追い込んだとして提訴され、彼の両親はお金を工面するため実家を売却し、姿を消してしまった。彼の兄弟はすでに保釈されているみたいだけど今どこでなにをしているのか誰も知らなかった。 そして一カ月くらい前から金を無心する電話が彼のスマホに頻繁に掛かってくるようになった。 「黙れ!黙れ!」 女性の言葉は怒りで震えていた。自分で自分の興奮が抑えられない様子だった。

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