きょろきょろと辺りを見回しながらエントランスに入ると菱沼組のみなさんが総出で出迎えてくれた。 「姐さんに会いに来たと言えば通してもらえる。あちこちにカメラがあるが、ま、気にするな」 ヤスさんに案内してもらいエレベーターに乗り九階まで移動した。こはるちゃんはずっと紗智さんに抱っこし服にしがみついていた。知らないところに連れて来られ僕より緊張してどきどきしている。 「ここが組事務所で、隣に若頭補佐の信孝さん夫婦が仮住まいしている。四季、行ってこい。姐さんが待ってる。心春、友だちがいるから一杯遊んでこい。円花と同じくらいの赤ちゃんもいるから優しくな」 「はぁ～い」 右手を上げたこはるちゃんの頭を紗智さんがお返事出来たね。偉いね。そう言いながら撫でてくれた。 「四季さん、こっち」 紗智さんに手招きされた。 「和真さん、円花を四季に渡してくれ」 「はい」彼から円花を受けると片手でしっかりと抱っこし隣の部屋に向かった。 「和真さん、あんたはこっちだ」 「あ、でも…」 「旦那禁制の女子会だ。カミさん同士積もる話しもある。和真さんの相手はオヤジと俺。取って食わないから、行くぞ」 むんずと腕を掴まれると、あれよこれよという間に組事務所に連れていかれてしまった。