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第一章・3

 紫苑の第二性は、βだ。  そして来夢は、α。  そのことで、紫苑は兄に対してコンプレックスを持っていた。  決して紫苑は来夢に劣っているわけではない。  兄に負けたくない一心で努力した甲斐あって、学力も身体能力も学年トップクラスだ。  しかし紫苑は、それで満足してはいなかった。  兄の持つ軽やかさ、人を引き付ける魅力。  そういった天性のものは、どんなにがんばっても身に着かない。  現に、友人の一人として紫苑が家に招いた波留は、あっという間に来夢の虜になってしまった。  波留の第二性がΩだと知ると、来夢は彼を一気に口説いた。 『君、可愛いね。名前、何て言うの?』 『Ωで北陽高校に入学できるなんて、すごいじゃん』 『俺は、αなんだけど。ね、運命の番って、信じる?』  紫苑なら逆立ちしても言えないような、浮いた言葉を次々と繰り出した挙句、その日のうちに波留を墜としてしまった。  紫苑は、それを見ていることしかできなかった。

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