12 / 69
第二章 波留のために
クリスマスを前にして、来夢の周囲が不穏になった。
波留が、こんなことを言い出したのだ。
「ね、紫苑。来夢、最近変わったことない?」
「どういう風に?」
「あんまり知らない人と、電話してるとか。会ってるとか」
「別に」
紫苑は短く答えると、読みかけの本に目を落とした。
「そっかぁ。だったら、僕の思い過ごしだよね」
来夢、浮気してるんじゃないか、なんて考えちゃった。
そんな風に、口に出してわざわざいう所を見ると、本当は自信が無いに違いない。
僕は、来夢に愛されてる。
来夢は、僕だけを見てくれてる。
そういった、恋人の鉄板が揺らいできているに違いない。
紫苑は、本を読むふりをしながら考えた。
(あいつ。来夢のやつ、本気で気があるのか?)
水島 由樹(みずしま ゆき)。
先だって、初めて来夢が自宅へ連れてきた男だ。
大学の合コンで知り合ったという由樹は、キュートというよりセクシーだった。
波留と、真逆の魅力があった。
危うい空気を醸す、大人のΩ男性だった。
ともだちにシェアしよう!