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第二章・3

 飲み始めてしばらく様子を見ながら紫苑が気づいたことは、来夢と由樹はまだそれほど深い仲ではない、ということだった。  しきりに酒を勧める来夢を、困ったような顔で見ることもある、由樹。  その都度、紫苑が彼をたしなめた。 「水島さん、ちょっと酔ってるっつーの。インターバル、読めよ」 「え~? 今夜は泊ってもいいくらいの気持ちなんだけど? 俺は」  そんな来夢に、由樹は微笑んで見せた。 「ホント? じゃあ、お風呂借りてもいいかな」 「いいよ~。次、俺が入るから」  その後、部屋へ行こう。  そう、来夢は言った。  紫苑は、すっかり酔っぱらっている兄の代わりに、由樹の世話を焼いた。 「風呂、こっちです。これ、部屋着。大きいかもしれないけど」 「この部屋着は、紫苑くんの服?」 「そうです」  その返事に、由樹はにっこり笑った。 「ありがとう」

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