17 / 69

第二章・6

「来夢、今付き合ってるヤツがいるんで。それで」 「二股が許せない?」 「そうじゃないけど」  じゃあ、何? と話す由樹の声は穏やかで、大人の余裕が見て取れる。  敵わないな。  波留は、この人には敵わない。  このままいけば、来夢は由樹さんに乗り換える。 (それだけは、避けないと) 「来夢より、俺はどうですか?」 「ええっ?」 「俺と、付き合いませんか。由樹さん」 「本気?」 「本気」  ぐい、と紫苑は由樹の方へ近づいた。  由樹は、逃げない。  にこにこと微笑み、妖艶なまなざしをくれる。  紫苑の唇は、由樹のそれと重なった。

ともだちにシェアしよう!