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第三章・3
「ンあぁ……、熱ぅい……」
ひくひくと痙攣しながら、由樹は紫苑の腕を掴んだ。
抜こうとする紫苑を、引き留めた。
「ダメ。もう少し、待って」
「面倒だな」
たっぷりと余韻を味わってから、由樹はようやく紫苑の腕を離した。
ずるり、と引き抜く時に、由樹の身体が軽く跳ねた。
「んッ、あ。あぁ、悦かった……」
ウェットティッシュで由樹の精を拭いてあげながら、紫苑は念押しのように言った。
「これで由樹は、俺の恋人だな」
「……いいよ」
まだ情事の名残でぼんやりとしたまま、由樹はうなずいた。
そこへ、荒々しい足音が階段を上がって来た。
来夢が起きたのだ。
ノックもせずに和室の引き戸を開け、来夢は部屋に入って来た。
「何だよ、紫苑てめぇ! 由樹に何しやがった!」
室内には、濃厚な牡の匂いが漂っている。
二人の間に何があったのかは、すぐに解ることだった。
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