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第三章・4

 思いきり、来夢は紫苑を殴った。  だん、と音を立てて、紫苑は襖に叩きつけられた。 「ちょっと、やめなよ」 「由樹は黙ってろ」  口の中が切れて、血の味がする。  紫苑は、そんな他愛もないことを考えながら、身を起こした。 「俺が眠ってる間に、由樹に何しやがった」 「同じこと訊くなよ」  それから、と紫苑は立ち上がった。 「解んないなら、来夢もたいがい鈍いな」 「この……ッ!」  紫苑は胸倉をつかまれながら、気怠そうに言った。 「由樹と、エッチしてました~。これで満足か?」  もう一度、紫苑は来夢に殴られた。

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