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第三章・5
起き上がるのも面倒で、紫苑は尻もちをついたまま食って掛かった。
「お前には、波留って恋人がいるだろうがよ! 何、二股かけようとしてんだよ!」
「来夢、そのこと僕に黙ってたよね。どういうことかな」
今度は由樹が来夢を攻撃した。
「いや、それは、その」
「クリスマスをボッチで過ごすのは辛い、って言ったのは嘘だったんだ?」
来夢は表情を崩して、由樹にすがった。
「それはさぁ、方便ってヤツ? それまでに、波留とは別れるつもりだったんだ。信じてくれよ」
呆れたように首を振り、由樹は溜息と共に吐き出した。
「最低。それにもう、僕は紫苑のものだから」
「それはないだろ。よりによって、弟に寝取られるなんて」
「寝取られる、なんて言わないで欲しいな。そもそも、来夢とは始まってもいなかったじゃないか」
僕は、僕の意思で紫苑と付き合うから。
そう叩きつけると、由樹は自分の服を着始めた。
「何だよ、どうしたんだよ」
「帰る」
まだ何か来夢は言っていたが、由樹も紫苑も聞く耳持たなかった。
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