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第三章・8
波留と二人でビーフシチューを食べていると、来夢が帰って来た。
「寒い~。お、今夜はシチューかぁ。あったまるな」
「来夢も、早く食べなよ。美味しいよ」
昨夜のしこりをまるで残さず、来夢は紫苑に対して自然にふるまった。
「美味いよ、ホントに。お前、調理師になれよ」
紫苑も根に持つタイプではないので、そのまま何事も無かったかのように接した。
「ちゃんと野菜サラダも食えよ」
「俺、生野菜嫌いだから」
でも、波留が食べさせてくれるなら、食っちゃう。
そんなおままごとのようなことを言う来夢に、紫苑はイラついた。
「じゃあ、あ~んして」
「あ~ん」
(波留も波留だ。甘やかしやがって)
恋人らしくいちゃつく二人が、いたたまれない。
紫苑は残りのシチューをかきこむと、すぐにキッチンへ入った。
洗い物をしていても、二人の様子が気にかかる。
「今度は口移しで食べさせてよ」
「もう、仕方ないなぁ」
波留のくわえたトマトが、来夢の口の中へ滑り込む。
そしてそのまま、キスをする。
紫苑は、見て見ぬふりをした。
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