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第四章・5
まるで夜逃げのように素早く、来夢はマンションへと引っ越していった。
必要最小限の物だけ持って。
家具などは、新しく買ってもらったのだろう。
兄を溺愛する、父に。
置き去りにされた来夢のベッドで、紫苑は由樹を抱いていた。
「ね、兄さんのベッドでする、って、どんな感じ?」
「別に。ただの家具だし」
「……ッん! やぁ、そんな、奥まで……ッ!」
骨まで軋ませる勢いで、紫苑は由樹を穿っていた。
このベッド。
波留が、来夢に散々抱かれた場所だ。
耳をすませば、彼の甘い声が脳裏に甦ってくる
『あ、あぁ、ダメ。あ、はぁッ! 来夢ぅう!』
は、と紫苑は目を見開いた。
(波留は、来夢のものなんだ)
ぶるりと、首を振った。
そして、俺の下で啼いているのは、由樹。
「あ、あぁ、ダメ。あ、はぁッ! 紫苑ッ!」
由樹は、勢いよく精を飛ばした。
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