45 / 69
第六章 突然のさよなら
セキュリティのためマンションの中に入れない波留は、寒い夜風に吹かれながら来夢を待っていた。
やがて見慣れた自動車が駐車場に入り、ほどなくして来夢が現れた。
「来夢」
「何だ、波留。今夜は会えないって言っただろ」
「あの、ね。どうしても顔が見たくなって」
「仕方ないな」
ロックを解除し、来夢と波留はマンションのエントランスへ入った。
「待ち合わせしてた人と、会えた?」
「ああ。一緒に飯食ったよ」
嘘だ。
どうして。
どうして僕に嘘をつくの、来夢。
「お前は、どうしてたんだよ。飯、ちゃんと食ったのか?」
「うん……。紫苑のとこで、おでん食べた」
どうしよう。
どうしよう、言おうか。由樹さんのこと。
「どうする?」
「え!?」
「泊ってくか?」
いつもの、来夢だ。
このままいつものように抱いてもらえば、何も壊れない。
今までのまま、のはず。
だが、波留は一歩踏み出した。
ともだちにシェアしよう!