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第六章 突然のさよなら

 セキュリティのためマンションの中に入れない波留は、寒い夜風に吹かれながら来夢を待っていた。  やがて見慣れた自動車が駐車場に入り、ほどなくして来夢が現れた。 「来夢」 「何だ、波留。今夜は会えないって言っただろ」 「あの、ね。どうしても顔が見たくなって」 「仕方ないな」  ロックを解除し、来夢と波留はマンションのエントランスへ入った。 「待ち合わせしてた人と、会えた?」 「ああ。一緒に飯食ったよ」  嘘だ。  どうして。  どうして僕に嘘をつくの、来夢。 「お前は、どうしてたんだよ。飯、ちゃんと食ったのか?」 「うん……。紫苑のとこで、おでん食べた」  どうしよう。  どうしよう、言おうか。由樹さんのこと。 「どうする?」 「え!?」 「泊ってくか?」  いつもの、来夢だ。  このままいつものように抱いてもらえば、何も壊れない。  今までのまま、のはず。  だが、波留は一歩踏み出した。

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