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第六章・3

「誰だろ。……知らない番号」  不審に思いながらも、電話に出た。  由樹からかもしれない、との予感があった。  そして、予感は的中した。 『もしもし、波留くん?』 「あ、はい」 『来夢の部屋に、入った?』 「いえ、まだです」  鼻から抜けるような笑いが、電話口から聞こえた。 『そのまま来夢に抱かれて、うやむやにしちゃうんだ』 「だって。だって来夢は、僕の恋人なんだし」  波留の言葉を聞いていた来夢は、その異常に勘付いた。  誰と話してるんだ?  まさか……。 「おい、波留。ちょっとスマホ貸せ」 「や、ちょっと。ダメ!」  無理に携帯をもぎ取り、来夢は電話口に出た。 「もしかして、由樹か?」 『当たり。そろそろ波留くん解放してやったら? 波留くん、たぶん紫苑のこと好きだよ』 「バカ言うなよ。そんなわけ、あるか」 『波留くんと別れないと、僕とはいつまで経っても始まらないよ』  それじゃ、波留くんと代わってよ。  由樹の言いなりに、来夢は波留にスマホを返した。

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