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第六章・4
「もしもし! 由樹さん!?」
『波留くん、おでん美味しかったね。帰りたいと思う場所が、本当に好きな人の居るところだよ』
「由樹さん!?」
『隣で紫苑、寝てるから。じゃあね』
通話が切れても、波留は放心したままスマホを耳に当てていた。
「おい、どうしたんだよ。部屋、入るぞ」
いらいらしたように、来夢が急かす。
『帰りたいと思う場所が、本当に好きな人の居るところだよ』
由樹の言葉が、重く胸に沈んでいた。
「来夢、今夜は帰る」
「はぁ? 何言ってるんだよ、ここまで来て」
「帰る!」
波留は、夢中で走った。
マンションを出て、駅までずっと走った。
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