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第六章・5
「小林、いよいよ明後日だな。クリスマス・イヴ」
「上手くいくよう、祈っててくれよ。遠野~」
放課後、こんな話をしていると、どこからともなく現れる波留。
元気に、明るく、朗らかに会話に混ざってくるはずだが。
(そして、俺の腕をぎゅっと掴んでくれるんだけど)
小林が不安を口にしていたが、紫苑はそれ以外のことに気がそれていた。
今日は、一度も波留の笑顔を見ていない。
沈んで、暗い顔つき。
(どうしたんだろう。来夢と、何かあったのか?)
「な、遠野。お前は何か予定あんの? クリスマス」
「何も。独りで鍋でもつつくつもり」
侘しいなぁ、と呆れる小林だが、実は由樹が家に来ることになっている。
二人で過ごす、イヴ。
だのに、まだ由樹へのプレゼントを買っていない紫苑だ。
こっそり波留への贈り物は準備しているというのに。
小林との話が終わり、一人になっても波留は紫苑の元へは現れなかった。
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