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第六章・9
波留がバスから出ると、紫苑は誰かと電話をしていた。
眉をひそめ、押し殺すような声で。
「それ、ホントかよ」
あ、と波留は直感で解った。
電話の相手は、きっと由樹さん。
そして、僕と来夢が別れた話をしているに違いない。
(どうしよう。そっと帰っちゃおうかな)
でも、紫苑は僕にご飯作ってくれた。
お風呂にも、入れてくれた。
そんな彼の優しさを、まるで無視して帰るなんてできない。
波留は思いきって、紫苑の前に出た。
「電話、由樹さん?」
「あ、波留」
「僕に、少し代わってくれないかな」
波留が由樹に、何の話だ。
「波留が、話したいって言ってる」
『うん。僕も波留くんと話したいよ』
「代わるけど、酷いこととか言うなよ。絶対」
『言わないよ、そんなこと』
紫苑から携帯を受け取り、波留は静かに瞼を閉じた。
どんなことを聞かされようと、耐える覚悟を決めていた。
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