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第七章 僕の幸せは、僕が決める
「由樹さん。僕、来夢と別れちゃった」
紫苑は波留の言葉に、唇を噛んだ。
先ほど由樹に伝えられたとはいえ、本人の口から聞くのは辛い。
(俺、波留のためにやったことだと思ってたけど、結局裏目に出たのかよ)
しかし波留は、しっかりと立っていた。
泣きもせず、両の足でしっかりと立っていた。
『大丈夫? 波留くん』
由樹の第一声は、優しくいたわりの響きを持っていた。
『返事できないなら、黙ってていいから聞いてね』
「はい」
『来夢から僕に電話があって。波留くんと別れたから、付き合ってくれ、って言われたよ』
「……」
『でもこれで、波留くんはホントに好きな人と一緒になれるから。今いるところが、波留くんの居るべき場所だから』
「由樹さんは、どうするんですか?」
波留の言葉は、由樹の鼻に抜ける笑いを誘った。
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