54 / 69

第七章 僕の幸せは、僕が決める

「由樹さん。僕、来夢と別れちゃった」  紫苑は波留の言葉に、唇を噛んだ。  先ほど由樹に伝えられたとはいえ、本人の口から聞くのは辛い。 (俺、波留のためにやったことだと思ってたけど、結局裏目に出たのかよ)  しかし波留は、しっかりと立っていた。  泣きもせず、両の足でしっかりと立っていた。 『大丈夫? 波留くん』  由樹の第一声は、優しくいたわりの響きを持っていた。 『返事できないなら、黙ってていいから聞いてね』 「はい」 『来夢から僕に電話があって。波留くんと別れたから、付き合ってくれ、って言われたよ』 「……」 『でもこれで、波留くんはホントに好きな人と一緒になれるから。今いるところが、波留くんの居るべき場所だから』 「由樹さんは、どうするんですか?」  波留の言葉は、由樹の鼻に抜ける笑いを誘った。

ともだちにシェアしよう!