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第七章・2

『任せておいて。波留くんの分まで、しっかり復讐してあげるから』 「復讐?」 『僕、αの男って大嫌い。特に、来夢みたいな自己中な奴』 「由樹さん」 『冴えないΩで、高校生までずっとαにいじめられてたんだ、僕。大学デビューして、そんな男たちに復讐してやることに決めたんだ』  波留は、息を呑んだ。  まさか由樹に、そんな凄惨な過去があったなんて。 「由樹さんは、それでいいんですか? それで幸せになれるんですか?」 『優しいね、波留くんは。でも僕の幸せは、僕が決めるんだ。僕の選んだ道を進んで』 「紫苑はどうするの? 由樹さん、紫苑のこと好きなんじゃないの?」  波留は、涙声になってしまっていた。  敬語も忘れ、ただ同胞のΩとして由樹の身を案じた。  彼の心を、思いやった。

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