64 / 69
第八章・3
「じゃあ、これは僕から。メリークリスマス」
「いいのか!?」
「紫苑は僕の……、彼氏だから」
プレゼントは、ミラトーレの折り畳み傘だった。
高級感のある、明るいグレーだ。
「雨の日が、楽しみだな」
「その時は、一緒に入ってもいい?」
「うん」
紫苑は試しに差した傘の下に、波留の肩を抱いて入れてやった。
「へへへ。何かいい気分」
「そ、そうかよ」
早く雨にならないかな、などとはしゃぐ波留が可愛い。
「そう言えば、学校帰りに少し雪が降ってたな」
「そうだった! 積もってるかなぁ!?」
サッシを開けて夜空を見ると、相変わらずほんの少しだけ粉雪が舞っている。
「これもホワイトクリスマス、って言うのかな」
「いいんじゃないか? 気分だけでも」
寒いから、閉めるぞ。
サッシを引こうとした紫苑の手に、波留はそっと自分の手を重ねた。
「寒いから……、紫苑があっためてくれる?」
「……ああ」
明かりをナツメ球に替え、二人は布団に横になった。
ともだちにシェアしよう!