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たまには兄から。②
ゴムを僕のものに装着するのまで、兄はしてくれる。兄はゴムの液溜めの部分を口に咥えると、膝を立てて座った僕の腿の間に額 ずいて、僕の先端にキスをするようにしてゴムを被せた。そして器用に唇を使いゴムを根元まで巻き下ろしていく。その唇の動き自体、ひどく扇情的で、僕の興奮を一層昂らせる。
僕はまた仰向けに寝かされ、兄は僕の下半身に跨がり、片手を僕の膝につき、もう片方の手を僕の猛りに添えて、ゆっくりと腰を沈めた。僕のものが根元まですっかり兄の中に納まり、脚の付け根の肌と肌が触れ合うと同時に、僕と兄の熱い吐息が重なり合う。
犯しているのは僕の方なのに、ゆっくりと上下する兄の腰の熱い内部に僕の中心を擦り上げられると、腰が砕けそうなほどの快感が襲ってきて、犯されているのは僕の方なんじゃないかと思えてくる。
焦らすように、兄は腰の動きを一定の速度に抑え、自らの手で自分の前を扱いている。顎を少し上げ、薄く開いた唇から、小さな喘ぎを漏らしている。まるで僕の身体を使って自身を慰めているかのようだ。痺れるような快感を僕に与えつつ、僕に断りも入れず、勝手に自身のタイミングで兄は達しようとしているように見える。僕はこんなに苦しくて切なくなっているというのに、兄は身体だけ添わせて心は寄り添ってくれない。
「お兄さん」
僕が呼び掛けると、
「何……」
今にもイきそうな声色で兄は返してくる。
「ごめんなさいっ!」
もう我慢の限界だ。僕は上半身を跳ね上げて兄に飛び付いた。しっかりと抱き締め、下半身を繋げたまま、体勢を反転させる。背中がシーツに押し付けられると、兄は目を見開いた。その表情は初めて身体を繋げた時のようだ。僕は兄の首筋に顔を埋め、かつて僕が着けた赤い咬み痕の部分を食んだ。渾身の力を込めて腰を兄に叩きつけ、兄の奥の奥まで打ち込む。
「あァ、イくっ……んっ……!」
僕の下に抑え込んだ兄の身体が弓形に仰け反り、びくびくっと痙攣した。
○
あー、やった、やった。ヤること自体、久しぶりって訳でもないのに、なんかすげー久しぶりに、セックスしたなぁって感じだ。
横着して、ベッドに俯せになったまま手を伸ばし、テーブルの上を探って、煙草とライターを取り、灰皿をシーツの上に移動した。シーツに肘をつき、煙草に火を点ける。ニコチンとタールが、まだ痺れの残る頭にガツンとくる。知玄 は横で、幸せそうな顔ですやすや寝息を立てている。そんなに満足かよ。俺もまずまずだが、若干不満が残る。あそこまでやったんだから、最後まで俺のペースでいかせてくれっての。ま、いつもみたいに知玄 のペースに最初から最後まで付き合わされるよりはいいけど。
突っ込まれてても、ちゃんと男としてヤれたような達成感に近づけた感じ。ふふん、つい顔がにやけてしまう。女の子みたいによがる知玄を見下ろすのは、結構いい気分だった。
本気を出したら、知玄にそんなのどこで覚えて来たのかと、疑われてしまった。「もしかしてお兄さん、僕以外の男ともしたことあるんですかぁ」なんて。まあ寝たことはあるけども、相手はやっぱり誓二さん だ。Ωの俺をとことん女の子扱いしてくるから、散々にイかされたって、こんな気分良かねぇよ。
またこういう風にヤらせてくれねえかな。出来れば最後まで。αはプライドと性欲が高いから、知玄でもきっとこういうのは嫌なんだろうけどさ。それに、親父とお袋の居ねぇ時じゃないと、あんなに派手にヤれねえし。
今日は親父を罠にはめたら、まんまと引っ掛かった。新聞屋がくれたクーポン券の束を、事務所の応接テーブルの上に置いておいたんだ。クーポンの束の中には近場の温泉宿の宿泊割引券があった。
親父はソファに腰を下ろし、煙草をくゆらせながら、クーポンをパラパラと捲り始めた。俺は親父の正面の席に座って、煙草に火を点けて言った。
「親父、また煙草の銘柄変えたん?」
「あ?」
俺は事務机に向かっているお袋の方をチラッと伺ってから、小声で言った。
「またまた新しい女でも出来たん?」
「あ?」
「……って、お袋が疑ってたよ」
親父はぎょっとしたように顔を上げた。
まさか、こんなに上手くいくとは思わんかった。だけど親父は変に察しがいいから、一度に使った手は二度は通じないんだよなぁ。
なんか、他に良い手があれば良いんだが。たとえば、福引きで一等ハワイ旅行七日間の旅二名様当選とか。今時そんな福引きどこもやってねぇし、そもそも俺、あんまりくじ運良くねぇんだよな。
(おわり)
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