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第2話
「観音坂先輩って酔い潰れると可愛いんですよ」
「ウソー!!見てみたい」
「だそうですよ、先輩!!先輩のちょっとイイトコ見てみたーい」
「……何故そうなる」
ハゲ課長は奥さんからスマホに電話があったらしく、そそくさと帰った後俺は何故か後輩達と二次会ならぬ三次会に突入していた。
後輩にも気を使って帰れなかった俺は本当に情けなかった。
俺はもう吐きそうなくらい飲んでいて、トイレに席を立った。
喉に指を突っ込んで強制的に吐くと、少し楽になり、手を洗ってから席に戻ると、後輩達の姿はなかった。
「すみません、お会計よろしくお願いします」
「……はい」
要するに俺は後輩達に奢るために存在していたのだ。
俺の財布の中身はほぼ空っぽで店を出た。
「だよな、俺のイイコトってそういうことしかないよな……そうだよな。どうせ俺は俺は俺は……」
居酒屋を出て下を向きながら歩いていると、俺の前に人影が止まった。
「君が一人になるのを待ってたよ、観音坂さん」
その相手は俺の仕事の取引先の相手だった。
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