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だが、始はすぐに表情をしかめた。 「しかしマズイな…マコ君を狙ってる妖が町まで下りてるとしたら、早いところ手を打つしかない。また今日も町に下りてくるかもしれないしね」 「…そもそもどう対処する予定だったんだ?」 「マコ君を森から連れ出したら、首飾りの力を使って妖を森に誘き出す。そしたらイブキ様がどうにかしてくれる予定だったんだ」 「丸投げじゃないか」 「森の神様以上に強力な相手はいないだろ」 そこでふと、疑問が沸いた。 「…マコをわざわざ森から連れ出す必要あったのか?首飾りを使うなら、マコが森に居たって良かったんじゃないか?」 「マコ君の安全の為だって言ってたよ。イブキ様が力を使うとなると、ある一定の範囲内に妖や動物達を入れないようにしないといけない、力が飛び火する可能性があるらしいから。だから、首飾りだけマコ君から預かるつもりだったんじゃないかな」 そう言いながらも、始はどこか歯切れ悪い顔をしている。それは、暁孝も同じだ。 「なぁ、そもそもなんでマコに秘密にするんだ?俺がアカツキ様の生まれ変わりだったら、マコがいくら待っても主は帰って来ない、だって主はもうこの世には居ないんだから。 それに、首飾りが狙われている事も。今、一番危険なのはマコなのに、何故知らせないんだ?」 「…マコ君がアカツキ様がこの世に居ないって知ったら傷つくからじゃない?」 「それなら、そもそも生まれ変わりの俺を呼ぶのはおかしくないか?」 「…全ては神様が考えた事だよ。俺だって妙だと思ったよ、でも単純に、アカツキ様と似たものを君から感じ取れば、安心して話を聞いて貰えると思ったからかもしれない。 まぁ結果として、マコ君はアカツキ様がまだ生きてると信じながら、君について森を出たわけだし」 眉を寄せる暁孝に、始はポンと背中を叩いた。 「今はとにかく、目の前の事だ」 暁孝は、呑み込めない事ばかりだが、渋々頷いた。そう、今はいつ来るともしれない妖を、どう対処するかだ。 「そのイブキ様に頼めないのか?妖の気配辿って捕まえるとか」 「それが出来ないみたいなんだよね、追える範囲もあるんだろうけど、辿ろうとするといつも邪魔されるみたいだ。だから今回、森に誘き出す事にしたんだって」 「…その作戦はすぐには出来ないのか?」 「すぐには無理だ。あの時はまだ妖は町に出てなかったから、少しずつやっていく予定だったんだ。森の住民を移動させるには、簡単な事じゃない。人手もいるし、うちの社員を呼ぶにしても、新幹線で三時間だからな、この森までとなると…」 準備を始める頃は、夜を迎えているだろう。夜になれば、また妖は動き出すかもしれない。 「じゃあ、俺達でそいつを捕まえるって事か?居場所は分かってるのか?」 「暁君も痛い目にあっただろ」 すぐに思い浮かぶのは、昨日の池での出来事だ。 「まさか、あれか?だから妖も近寄らなかったのか…」 「恐ろしい奴には極力近づきたくないだろ。問題はどう捕らえるかだ。池に仕掛けを張るといっても、人員が必要だし、装置も必要だ。妖も怯えきってて力になってくれるかどうか…やっぱりここは、森に誘き出してイブキ様にどうにかして貰うしかないかね…」 出来ない事は無いが、被害が大きくなるだろう。傷つく必要の無い森の住民を巻き込む位なら、イブキは手を出さないかもしれない。 悩む始に、暁孝はふと思う。 義一なら、どう対応したのだろう、と。 義一は装置だなんだと機械や道具に頼らず、言葉や姿勢で妖と渡り合ってきたという。 社から少し離れた場所で楽しそうに遊ぶマコの姿を見つめ、自分に何が出来るのだろうと、暁孝は思い巡らせた。

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