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(う、うろたえすぎ)  どうにか平常心を取り戻したいのに、僕の目は吸い寄せられるように滝口さんの眼鏡姿ばかりを見つめてしまって、一向にどきどきが収まらない。……こ、こんなに見てたらバレちゃわないかな。  でも、目を離すことも惜しい。  眼鏡ってこんな、こんな破壊力のあるアイテムだったっけ。 (ううう。可愛いのに格好良い……)  ゆるっとしたシルエットの黒フーディーに、同色のスキニーパンツ。傍らには、被ってきたものだろうキャスケット帽もある。変わらずお洒落だけど、本人が言うとおり、今日のスタイルはいつもよりぐっとラフなんだ。 「瑠姫君、突っ立ってないで座りなよ」 「えっ……あ、いえ!」 「なんて言って、ソファの一つも置いてなくて申し訳ないけど。クッションあるだけ集めてあるから、好きに寄せて居場所にしちゃってね。そういえば、お昼はどうするの?」 「……お、お邪魔します」  僕は膝を折って床に座ると、適当なクッションを傍らに抱き寄せる。滝口さんの後ろ腰あたりには、ひときわ大きなビーズソファも見えてた。 「どこかに食べに出るとこだった?」  見慣れないレンズ越しの瞳が、僕の斜めがけバッグを捉える。僕はスーツの上着もちゃんと着込んでいるし、マフラーまで付けていて、どう見ても「これから外出します」スタイルだ。 「昼食は、その、申し訳ないんですがこちらの確認だけ滝口さんにしていただいて、僕はそのまま、外に買いに出ようと思ってました」 「確認? どんな?」  滝口さんに促されて、ずっと手にしていたタブレットを差し出す。 「オフィシャルサイトの草案です。こちらで記載するプロフィールなどをまとめてみましたので、誤りがないかどうか目を通していただきたいのと……、あとは、デザイナーさんの方からサイトのデザイン案も届きました。ざっくりしたラフ画ですが、イメージは掴みやすいかと思います。それと、滝口さん本人のポートレートの詳細についてもお答えいただいています。どのサイトデザインを選ぶにしても、共通して必要なサイズだったり点数だったりを挙げていただけました。こちらは問題なければ、僕からカメラマンさんに伝えておきますが……」 「いっしょに撮影日とスタジオも確保したいから、それはかなえちゃんに任せようかな。瑠姫君から彼女に伝えておいてくれる?」 「はい」  滝口さんの言う「かなえちゃん」は、行待さんのことだ。行待かなえさん。僕は胸ポケットからスマホを取り出して、手早くタスクを作る。

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