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 駅から歩いて十分近く。目当てのお店に辿り着くと、看板として灯る行燈のところには先客が一組。 (あ) 「……もしかして、予約した方が良かったのかな」  夕食のピークにはまだ少し早い時間にも関わらず、店内はもういっぱいなんだ。美味しくて雰囲気のいいお店だということは覚えていたけれど、すんなり席に着くことが叶わないくらいの人気店だとは思っていなかった。  滝口さんに連れて来てもらった時も、お店の外で並んで待った記憶は一度もない……。 (滝口さん、いつもわざわざ予約しててくれたのかな)  滝口さんはなんにも言わないで、気付かせもしないで、そんなふうに細やかな気遣いをしてくれる。その優しさはもう傍らには居ないのに……、変わらず、僕の心を揺らすんだ。  僕は二重に打ちのめされたみたいな気持ちで、友人を見上げた。 「ごめん大輔。どっか、ほかのとこ行く?」 「いや、いいよ。見たとこ俺ら二組目じゃん。まあ、店ん中にも待機客は居るのかもしんないけどさ。それでも今から別のとこ移動して店探して……なんてやってる時間で充分座れる」 「僕が覚えてるかぎりだと、お店の中に待合席みたいなのはなかったと思う……」 「んじゃ、なおさらすぐじゃん。つか、瑠姫が立って待つのしんどい? それなら移動した方がいいか」 「ううん。僕は平気」  ゆるりと首を振る僕を傍らに見て、大輔はにかっと笑顔になった。 「おっけ。のんびり待とうぜ」  こういう時に笑うの、ほんとに「大輔だなあ」という気がして、ほっとする。僕は幼馴染みを見上げたまま、自分の強張ってた頬が、ふわりとほどかれてゆくのを自覚した。だからこそ、混ぜっ返すみたいに軽い冗談をぶつけたくなる。 「でも大輔、これがお得意様連れてのごはんとかだったら、僕のこと絶対使えないやつって思うよね」 「それはそう」  あっさりと頷いた大輔は、先客の後方で足を止める。遅れて彼の隣を目指す僕のことを、にやにやしながら待つんだ。 「こんな凡ミスかますのは後輩だろ。翌日の昼ごはんでみっちり説教だな」 「うわー、業務時間中じゃなくてわざと昼休み潰すんだ。いやな先輩だなあ、もう」 「その代わりメシ代こっち持ちよ?」  それって良い先輩なんだか、悪い先輩なんだか。僕は苦笑してしまう。

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