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(どうして)
「瑠姫もダメか~。んー。なら、オレもやめとく。一人で酔うの寂しすぎ」
「だ、大輔も呑めば、いいのに」
どうして、僕がお酒苦手だって知ってるんですか。
滝口さんに向けてそう問い掛けたいはずなのに、僕の口は勝手に動いて、幼馴染みの方へ話し掛けている。
「ここに来るまで日本酒楽しみって言ってたし、いつも、僕のこと気にしないで呑むし。だから、今日だって良いのに」
「だめ」
「なんで? 篠宮君と呑めば楽しいよ、きっと」
「瑠姫のこと置いて酔っ払えない。だから、だめ」
「は……」
なに、その言い方。
あまりの違和感に、僕は固まってしまう。……いつだっけ。あ、高校の頃。夏休みで帰省した僕は、大輔に誘われて、大輔の高校の仲良しグループに混ぜてもらったことがある。
そう、花火大会に遊びに行ったんだ。男女取り混ぜ十人くらいの華やかな面子。その中でもひときわ美人な女の子が、大輔の当時の彼女だった。
(僕うっかり、みんなとはぐれて)
花火を見上げる人波の中、ようやく大輔の姿を見つけて駆け寄ったら、僕からは見えない位置に彼女が居て──つまり二人は、二人だけでグループを抜け出して、しっかりデートしてたわけなんだけど。
その時、期せずして盗み聞きしてしまった大輔と彼女の会話が、たしかこんな雰囲気だった。
いわゆる『彼氏モード』の大輔を見たのは、あれが最初で最後……。
「えっ、うわっ? さすがにそれはないか~ってこっちで勝手に思ってたんだけど、瑠姫とダイスケさん、やっぱりただの幼馴染みじゃない感じだ?」
「えっ!?」
僕が固まっている間に、篠宮君の中でものすごい誤解が生まれようとしている。
「たっ……」
ただの幼馴染みだよ、と返そうとした僕の声を遮るように、大輔は「うん」なんて言う。見たことないくらいやわらかな、『彼氏の笑み』まで湛えて。
「瑠姫とはもうずっと、『ただの幼馴染み』じゃないかな」
「っ……」
それ、実は従兄弟でもあるし、てことだよね!?
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