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そういう意味では確かにただの幼馴染みじゃないんだけど、でも、明らかに篠宮君は別方向に誤解しようとしてるし、大輔はどうしてか、それを止めようとしない──どころか、むしろ相手の誤解を助長させようとしてる素振りまである。
だけどそんなの、何の為に?
(僕達も同性カップルってことにして)
(滝口さんと篠宮君の関係を、カムアウトさせようとしてる?)
(でも)
それって、大輔にどんなメリットがあるんだ。
大輔は悪く言えば計算高い、良く言えば思慮深い人間で、あんまり意味のない言動は取らない。もちろん、篠宮君をただ誤解させて面白がっているとか、そんなふうに人で遊ぶ男でもなかった。
だから、何か意味があるはず。
僕にはわからない大輔の意図を探るのは、まるで濃い霧の中を手探りで進むみたいだ。なんにも言えないまま、僕の頭の中はフル回転する。
そこにひやりと、冷たい声音が差し挟まれた。
「へえ。瑠姫君、そうなんだ」
「っ……」
声の主へ目を向けると、滝口さんはとても穏やかに微笑んでいる。彼の浮かべる表情と声音の間には明らかなギャップがあって、その意図的な温度差は、ひたひたとした怒りとしてこちらに伝わってきた。
「瑠姫君にそんな相手がいたなんて、初耳だな」
「……そ、れは」
だって、こんなの嘘……ではないけど、大輔も嘘は言ってないんだけど、でも。
(ほんとのことでも、なくて)
「ああ、でも、そういえば。俺も、瑠姫君には決まった相手がいるんだろうなって思ってた時期はあるよ。君がスウィートホームクッキングに入ったばかりの頃かな……もしかして、当時からずっと?」
滝口さんは笑顔のまま、僕からそっと目を外す。そうして、僕のことなのに、大輔に向けて尋ねた。
それはなんだか、直接「どうして秘密にしてたの?」と責められるよりも、僕の心を強く打ちのめす。
(誤解、だけど、……でも)
僕の声を、この言葉を、「要らない」って言われたら、もうどうすればいいかわからない。
滝口さんはいつも、いつでも、もたつく僕の言葉をゆっくり待ってくれたし、途中で切り上げさせたりしないで、最後までしっかり聞き出してくれた。
(ああ、そっか)
僕はやっぱり、滝口さんにとても甘えてたんだ。
だって、滝口さんがそういう「優しさ」を見せてくれないというだけで、何をどう話したらいいのか簡単に見失ってしまう。……ううん、違う。
何をどう話してももう無駄なんだと、心が勝手に諦めてしまう。
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